【富翁・北川本家】 伝統と革新を支える、蔵人の時代感覚と挑戦心

▼江戸・明暦3(1657)年創業、「富翁(とみおう)」ブランドで360年に渡って伏見の酒造文化を牽引してきた「北川本家」。伏見でも歴史ある酒蔵で、その伝統をひたすらに守り続けてきました。また「食中酒」として京都の食文化とともに進化を重ね、地元の人に愛され続けてきました。さらに近年では積極的にイベントに参加し、消費者の生の声を酒造りに活かす取組みも。グラスで飲む日本酒「富翁 純米酒 プルミエアムール」もそうした声から生まれた商品の一つです。

伝統を守りつつ新たな取り組みにもチャレンジする伏見を代表する酒蔵。
今回は「北川本家」14代目当主である、代表取締役社長の北川幸宏さんにお話をうかがいました。
※本インタビューは2017年2月に行いました

ここが最旬ポイント

・守り続ける伏見の伝統。伏見で最も古い酒蔵が担う使命
・潜在的ニーズを捉える。時代に合った酒造り
・機械化から手作業へ。受け継がれる蔵人の「嗅覚」

守り続ける伏見の伝統。伏見で最も古い酒蔵が担う使命

この酒蔵で注目すべきは何といってもその歴史。「月桂冠」と並んで公式の記録では、伏見で最古の酒蔵と呼ばれます。360年という長い歴史の間、料理に合わせるお酒「食中酒」として京都の食文化を支え続けてきました。14代にも渡って伏見のお酒らしく、柔らかくて綺麗な口当たりで地元の人々に愛されてきました。
代表銘柄「富翁」は、今や京都の酒好きの間では最も有名な銘柄の一つ。2017年春の蔵開きでは約1,800人ものファンが新酒を求めて列を作ったそうです。
「長い歴史の中で伏見の繁栄から衰退まで、その一部始終を見てきた酒蔵だからこそ伝えていくべき使命がある」と代表の北川さんは語ります。

潜在的ニーズを捉える。時代に合った酒造り

ただただ伝統を守っているだけではありません。「北川本家」では平成11(1999)年、伏見ではいち早く季節雇用の杜氏蔵人制度を廃止し、社員杜氏制度に切り替えました。それ以降は「造り手も消費者からの声を知るべき」という想いから京都のイベントに積極的に参加するなど、消費者と直に触れ合う機会を作っています。
北川さんの考える現代の酒造りの在り方とは、「潜在的ニーズを捉えるのが清酒メーカーの役割で、伝統を守りつつも時代の変化に対応した酒造りをしないと生き残れない」との事。そんな中で生まれたのがワイングラスで楽しむ日本酒「富翁 純米酒 プルミエアムール」です。白ワインのような甘酸っぱさを実現し、フレンチやイタリアンに合わせて楽しめる日本酒の新たな可能性を提案しました。

公式サイトより)

機械化から手作業へ。受け継がれる蔵人の「嗅覚」

時代に逆行しているようにも感じますが、「北川本家」の酒造りでは機械を使わない手作業での工程を増やしています。「機械化する事は作業効率を高めるのに重要な事ではありますが、根本的に“何が機械に置き換わっているのか”をきちんと理解し、何かあったときにすぐ対応できる力を身につけるべきだ」と北川さんは語ります。
分析機械で出る数値はあくまでも結果であり、そこで異常に気付いても手遅れである。機械がある事が当たり前になった時代だからこそ、発酵している時の泡や香りの微妙な違いに気付けるような「嗅覚」などの五感を身に着けてもらいたいと若い蔵人の育成にあたっています。

取材担当者より

伏見で最も古い酒蔵として360年間「伝統」を守り続けてきた事、そして時代に合わせて絶えず「変化」している事の二面性がとても新鮮に感じられました。とにかく消費者との交流を大切にされていて、蔵開きでは敷地いっぱいのお客さんを笑顔にさせていたのが印象深く残っています。
清酒だけでなくリキュール、焼酎、女性向けの美肌純米酒など、消費者の心に響くようなユニークな商品も多数!京都・伏見にある「北川本家」の直営小売店舗「おきな屋」では、これらの商品のほか、製造現場の乾蔵からタンクごと運んでくるレアな「量り売り原酒」の販売もありますよ。

(2017年3月蔵開きの様子)

【DATA】
「株式会社 北川本家」
所在地:京都市伏見区村上町370番地の6