【IL GHIOTTONE(イル ギオットーネ)】京野菜とイタリア料理を結びつけた先駆者

▼京都・東山エリア、八坂の塔のそばにある静かな一軒家のリストランテ「イル ギオットーネ」。2002年のオープン以来、予約のとりにくいレストランとして知られ、「もしイタリアに京都という州があったら」をコンセプトに、地元の食材を活用するなど京都でしか味わうことの出来ないイタリアンを提供しています。見た目も鮮やかな逸品は、日本酒好きをも魅了します。

今回は「IL GHIOTTONE(イル ギオットーネ)」オーナーシェフの笹島保弘さん(以下、S)にお話をうかがいました。

 

京都で開店して16年。オリジナルであるために

ー 東山・八坂の塔の横にお店を構えられて、16年目ですね。当時は京野菜をイタリアンに使うという発想を持つお店自体がありませんでした。この16年の間に、京野菜を含めた地元の食材を調理して出すお店がすごく増えたと思うんですね。いまオリジナリティを保たれるために心がけておられる事はどういったものでしょうか?

S:地元の食材を使うという大きな流れが来ることは、16年前から感じていました。グルメブームが起きて、美味しい肉を食べるようになって、心情として野菜に回帰しようかなというのは絶対時代の流れやったと思うんですね。たまたまそれに僕の取組みがうまく合致したのではないかと。

 

イタリア料理ってそもそも何?って聞いても、イタリア人はわからない。ローマはローマ料理としか言わないし、ミラノはミラノ料理やミラネーゼとしか言わんよと。ならば「もしイタリアに京都という州があったら、どんな料理なのか?」を考えてみたんですね。鱧や鮎、筍もどんどん料理に取り入れてきましたたし、これからも地場の食材を使って独自の料理を作っていきたいと思っています。いつでも先駆者でありたいなと。

 

最近の変化と考えていること

S:この10年位で、お客さんが上手にレストランを使うようになったと感じます。コストパフォーマンスはもちろん大切ですけど、やっぱり上手になったんです。お客さんの楽しみ方が。今はおいしいだけではだめなんですね。面白ければいいってことでもない。美味しくて楽しくて、といったことが求められている。10年後はどうだか分からないですけど、今は明らかにそうなんです。だから、イタリア料理を自分がどんな遊び心で取り組めるか。

 

商売としてこういうトレンドだから、業界としてこれが流行っているからということにとらわれてはいけないと思っています。自分がお客さんで、同じお金払うんやったら、こっちの方が面白いでしょうという提案ができるかどうかじゃないでしょうか。

 

もちろん、クリエイティブな力は年齢を重ねるごとに落ちていく部分もありますよ。一方で、経験が積み重なって幅が広がる部分もある。正直なところ、自分が先陣切って、キッチンに立ってやっていくというのはこの10年が最後かなと思います。逆に言うと、この10年間位が今までで最高の10年なんじゃないですかね。
例えば、やろうと思ったことが全部出来る。具現化できるし。キャリアもあるから発想力もある。若い時って良いアイデアはあっても技術と経験が足りないから、思った通りに落とし込むことが出来ない。それがだんだん無くなってくる。だから50代って何の仕事でも職人として1番良いんじゃないですか。
料理人という自分の好きな商売をやれてるっていうことは、ものすごい幸せなことですよね。自分が就いたこの職業人としての、「1番良い最後の10年間」みたいなものを楽しんでやりたいなと。もちろんビジネスですから、ビジネスのことも考えなあかん。経営者ですからね。

原点回帰、自分の持ち味は何なのか?

ー ビジネスに関しては過去に様々な業態のレストランを手掛けられ、今は京都・東京・大阪の合計3店舗に絞られていると思うんですが、商売としての難しさ、心境の変化、どういった理由が大きいのでしょうか。

S:自分の持ち味として一番お客さんにアピール出来るものは何かと言うと、リストランテって言われる形式なんです。パスタとかサラダでは終わってほしくない。フルコースで、パスタもメインも、デザートも食べて、ワイン飲んでもらって、「今日は良いレストランで食事したなぁ」という体験を味わってほしい。
だから、中途半端な形式のお店は全部やめて、そこに集約したんです。「色々やってたけど縮小して元に戻ったやん」と言われたらその通りなんですが、やっぱり経営者として、レストランチェーンとしてある程度展開をしたからこそ、自分がやるべきことに気づけたというか。色々経験してチャレンジした後の元のその位置っていうか、それは大きいですよね。

 

ー 今は3都市を行き来しながら、日々現場に立って、調理しておられます。次のステップに進むためのインプットは、忙しい日々の中でどういうところから得てるんでしょうか。

S:僕は気分転換の旅行、とかほとんど行かないんですよ。逆に現場に出て毎日仕事してないと、インプットはないですね。出し続けなければ入る余地はないから。部屋だって、要らない物を捨ててかないと新しい物を入れられないでしょ。だから、やっぱりアウトプットし続けてるからこそ、インプットが入ってくる。そんなもんやと思いますね。
こういう料理を作りたいと思って、表現する。出し切る。そしたらまた新しいことが入ってきます。店の中のここを変えた方がいいな、改装した方がいいなと思って実行する。そしたらまた新しい考えが浮かんで来るんです。

 

ー 笹島さんを拝見していて、行動の原動力に「負けん気」のようなものが感じ取れるんですけど、その負けん気の強さはどういうふうにして養われたものなんですか。

S:負けん気というのは、僕の場合は他人に対してというよりも、自分に対するものなんです。
自分のことは自分にバレるでしょ。例えば色々理由つけて何かをやめたり、逃げたりすることって簡単なんですよね。
たとえば「あの時こういう理由があって出来なかった」って言い訳したとしましょう。大抵の場合、「あ、そうなんですか」と流れて終わっていくじゃないですか。でも、ほんとは自分が一番分かってるんですね。あの時逃げてしまったなとか、なんかもったい無いことしたなとか、もっとやっとけばよかったという後悔とかね。だから、もし負けん気が滲み出てるんだったら、それは、対、人ではなくて自分なんですよね。

自分に対する反省はすごくあるから。やっぱり自分は自分をごまかせないからですよね。自分に対してついた嘘とかずっと消えない。言い古された言葉かもしれないですけど、やって後悔した方がいいんです。やらんで後悔するっていうのはほんまに何回もありますよ、そういうこと。自分で自分に期待してるし、その期待を自分で裏切りたくないんですよ。

ー 逆にそれだけの向上心をお持ちだからこそ、後進の方を指導・育成するという時に、伝えるのが難しいのではないですか?もどかしく感じることはありませんか。

S:僕の場合は行動で見せるしかないのかなと。口で言うというよりも自分がやってしまうってことですよね。すごい些細なことですけど、例えば掃除とかでも、一方的に、「お前、ここ掃除しろよ」って命令してもなかなかやらないですよ。ずっと言ってた時期もあるんですけど、もう言わないですね。自分でやるんです。それは嫌味でもなんでもなく、ほんまに自分が掃除をやるんです。そしたらね、みんなやるんですよ。

だから、僕は料理長に対しても、マネージャーに対しても言うんですね。「下の子が動かへんとか、言うこと聞かないんです」ってのは、君らがやってないからではないか。一生懸命に鍋を磨いてたら、その横でね、コーヒー飲みながらハハハって言うてる奴も、そのうち鍋を鍋を磨きだすから。だから、まずは自分がやんなさいということですよね。それは仕事の一例です。何の仕事でもそうね。

 

【DATA】
「IL GHIOTTONE(イル ギオットーネ)」
所在地:京都市東山区八坂上町388-1