【京 静華】独創性に富む美しい中華料理は食する芸術

▼岡崎に静かに佇む中華の名店「京 静華(きょう せいか)」。今までの中華料理のイメージを覆されるような、美しい盛り付け、洗練された味付けの皿がコースで次々と供されます。初めて訪れると、おいしさだけでなくその世界観に衝撃を受ける事でしょう。

四川から北京など全ての流派を現地で学び、さらには古典的レシピの再現に取り組むなど、オーナーシェフ宮本氏の探究心はとどまる事を知らず、料理はさらに進化を続けています。

今回は「京 静華」オーナーシェフの宮本静夫さん(以下、M)にお話をうかがいました。

 

創業からの歩み 〜中華の全てを学び続けた日々〜

ー 初めにこちらは2008年創業との事ですが、その経緯を教えてください。
M:サラリーマンから料理人に転職して10年ほど勉強し、まず静岡県浜松で創業しました。そこから25年経て、京都にやって来てこの店を開店しました。
浜松での25年の間に台湾、台北、香港…。それぞれ本格的にしっかり見聞を広めたいという事で、現地の料理店に研修に行きました。最初は台北の四川料理と湖南料理のお店です。次に香港のホテルに入りました。ヌーベルシノワですね。最後は北京、これは料理学校でした。ちょうどその頃北京には私設の料理学校が出来始めていた頃です。良いチャンスだと思いました。北京でマンションを借りてそこで生活しました。だからマーケットで食材を買って家で料理をして食べ、学校に行って、若い子達と一緒に包丁を研いだり、ジャガイモの皮むきをしたり、千切りをしたり、炒めたり、餃子の皮を伸ばしたりしていました。

 

ー 基礎的なところからですか?
M:全部基礎です。中には内モンゴルから出てきて包丁も握った事がない田舎の子もいました。
先生に「あんまり早く切ったらいかん」とか言われました。「みんな手を怪我するぞ」とかね。でも若い子と一緒に試験をすると本気にならないと、中々一番良い成績の“非常好(フェイチャンハオ)”は取れないのです。普通の“好(ハオ)”ではなく、“非常好(フェイチャンハオ)”が取れるようにしていました。みんなは“好(ハオ)”で良いのですが、やはり私は“非常好(フェイチャンハオ)”で全部通したいと思っていました。でも中々そうはいかないので、それは自分の実力だと思ってめげたりする事もありましたが、とにかく全力で……

 

ー なぜ浜松から京都に来ようと思われたのですか?
M:北京に研修に行った時に、古い寺院がたくさんあり歴史を感じられました。多くが取り壊しの最中でしたがそれでも残っている所があって、雰囲気がすごく良いなと感じました。自分もそのような伝統的なものを活かすような料理をしたいという気持ちがあったので、それで京都を考えました。また、浜松時代もよくこちらへ食べ歩きには来ていました。
1つ自分の目標だった、四川や広東や北京、上海での現地研修をしてどんなものだろうと…。研修の中で自分なりの料理を考えていきました。

 

ー 中国の◯◯地方の料理をやっています、というわけではないのですね?
M:はい。自分なりの、要するに良いとこ取りです。うちはお任せコースのスタイルなのですが、杏仁豆腐は定番人気のメニューです。デザートは浜松時代から何十年もずっと変えないで、同じスタイルのものです。

 

ー 業界内での勉強会も主宰されているとお聞きしました。研究に余念がありませんね。
M:『中国名菜譜』という古典、古い時代のレシピを題材に学んでいるんです。1958年に国が指導して国家が編さんした大規模な中国料理メニューのレシピ本を題材に、再現に取り組んでいるんです。

 

ー 参加されるのは京都のお店の方が中心ですか?
M:和食の板前さんも来ますし、フレンチのシェフも来ます。それから東京からも来ました。大阪からも常時来ます。岐阜からも1、2回、夜中に車を飛ばして来ました。自分にとっては、自分がやりたい事なのでみんなが来てくれるのはとても嬉しいですね。
ここで学んだ事は、きっと誰かが別の形で繋げてくれるでしょうし。

 

味ともてなし、それぞれの追求

ー 心がけている事や大切にしている事はどのようなものですか?
M:営業的な事で言うとやはり先程も言ったように、何度も通ってくれるお客様を増やしていきたいという事です。あえて2階で看板も出ていませんので、常連さんが一番大事です。
考え方として、印象に残るもの、色々な印象というのはあると思いますが、誤解を恐れずに言うと、わ~っとびっくりたまげるほどおいしくなくても良いんじゃないかと思っているんです。口を喜ばせる事は確かに大事ですけれども、気持ちの方がすごく大切ではないかと。
気分良く食事を楽しめる。つまり、舌と心、トータルに満足できるようなお店を目指したいです。店名の通り「静かに華やかに」という事ですね。

 

ー 浜松と京都とお店をずっとされてきた中で、苦労した点やあの時はピンチだったというエピソードはありますか?
M:(浜松の)当時、中華といったらラーメンや餃子です。ホテルは別として中華レストランは「料理」と思われていない時代でした。そこで「レストランとして中華料理をやりたい」と言ったら、周囲から「成り立つわけがない」と言われました。最初お客さんが付くまで1年くらい苦労しました。開業資金が底をついて、さぁどうしようという時もありました。
その後、料理の提供スタイルも少しずつ変化してきました。最初は取り分けて食べてもらう形だったのですが、香港での学びをきっかけに、本格的に個人盛りを導入しました。ワインを置こうというのもその時からです。

 

ー 現在は日本酒も置かれているのですね。
M:純米酒なら良いのではないかと。大吟醸なら最初のイントロで、前菜に淡麗が合うのではないかと思います。例えばエビチリなどは、紹興酒と同じように「司牡丹」のような日本酒っぽい日本酒が良いと思います。

 

ー 今後の展望をお聞かせください。
M:今16席あるのを半分にしてもう少し料理を際立たせるなど、密度の濃い事をしたいです。自分の料理は一代という事で、自分なりに規模を段々小さくしていこうと考えています。
そして、もう1つやはり別なスタイルのものをプロデュースしたいですね。そちらの方も、今までの積み重ねと今からの向上、そして先程言った古典の勉強もそのような事に繋げていく1つの方向性かなと。

昔の料理を再現するのはただ単に興味があってしているわけではなく、何かそこにヒットする種が転がっているのではないかという宝探しです。酢豚にしても麻婆豆腐にしてもエビチリにしても、誰か種をまいた事で、これだけ日本の国民食のように広まったので、その広げていく側になれたらと思っています。

 

 

【DATA】
「京 静華」
所在地:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町36-3 2F