【六盛】京料理店が手掛ける麗しきお弁当の世界

▼平安神宮のほど近く、琵琶湖疏水を臨む場所にある料亭「六盛(ろくせい)」。人間国宝・中川清司氏作の手桶を器に料理を盛る「手をけ弁当」が名物です。内側に塗りを施した美しい手桶に、野菜の炊合せや焼魚、だし巻きなど、京料理の旬な食材が色とりどりに盛り込まれ、思わずため息がもれるほどの美しさです。


今回は「六盛」三代目当主の堀場 弘之さん(以下、H)にお話をうかがいました。
本インタビューは2017年2月に行いました。

お店のルーツと名物「手をけ弁当」誕生秘話

ー まずはお店の歴史についてお聞きします。明治32(1899)年に仕出し店として創業され、昭和41(1966)年から名物の「手をけ弁当」を始められました。このお弁当の形は、それまで無かったものだったのでしょうか?
H:先々代は寿司屋をしていました。その際に六寸サイズのちらし寿司を売っていて、とても評判が良かった事から、六寸の桶と冷奴の桶(「手をけ弁当」を売り出すヒントになった器)を合わせてみたのです。
手桶のように丸い器に盛り付けるのがとても難しく、食材の大きさもある程度決まってくるし、バランスもとりにくかったです。

ー 京都ではさきがけで始められたのでしょうか?
H:雑誌などでは「弁当のさきがけ」と掲載されていますが、料理屋として座敷をイス席に変えて営業し、八寸・焼物・煮物・ごはん・赤出し・香の物・フルーツをセットにしてお出しするスタイルが、ひとしなずつお出しする京料理からすると新しかったのでしょう。

ー 「六盛」さんのお料理は、見た目がとても綺麗なのでファンも多いですね。
H:パッと見た時に「おいしそう!」と思って貰える事は非常に重要なんです。人間は目で見て第一印象を感じます。人間で言うところの可愛いなとか、イケメンだなとか、お料理も同じです。パッと見た時に、綺麗だな、おいしそうだなと思って貰えれば、80点くらい貰えます。頭の中で「おいしそうだな」と思って食べるとおいしいのです。「何か今一つだな」と思って食べると、本当はおいしいのだけど味がちょっと…という印象になってしまいます。

ー 梅干を見て酸っぱいなと思いながら食べると、やっぱり酸っぱいという感じですね。
H:見た目重視のお料理を作ると、色良くできます。信号の赤、青、黄色、それに白と黒を足したのが色の五元素です。
その五元素をお料理にちりばめていくと、良い色合いのものができます。「この色が足りないからこれを持ってこよう」とか、「暗いところを明るくするにはどうしたら良いか」など、そう考えていくと、全体的なまとまりとして綺麗に仕上がります。

 
手をけ弁当3,240円(税・サ別)(写真は六盛HPより)

味を守り、高めていく為、支店は出さない

ー お店は1店舗主義であると聞きましたが、今後も支店は出さないのですか?
H:支店は出さないつもりです。人間がする事なので、「味が均一的にならない」、「あちらの店はおいしいが、こちらはおいしくない」というのは避けたい。目の届く範囲で仕事をするのが良いだろうという事です。また多店舗を展開するには財力も必要です。
うちは料理中心でいきたいので、おいしいものを提供する事に重点を置いています。(多店舗展開によって)儲かると、店舗や物が増えてそれはそれで良いのですが、味がそれに追いつかないと思っています。現在、「ジェイアール京都伊勢丹」にお弁当コーナーもはありますが、お出しするものは全てここで作って配達しています。

ー 味以外にも大事にされている事、心がけておられる事はありますか?
H:東京オリンピック誘致の時に盛んに言われた「おもてなし」です。どこまでがおもてなしなのか。お料理のおもてなしもありますし、違う部分でのおもてなしもあります。お客様に季節ごとにお越しいただいて、季節を感じて、喜んで帰っていただけるような店づくりを心がけています。又、お料理は体を作る大切なものなので、お客さま方に体にやさしいお料理をと心がけております。

ー 今後、力を入れていきたいと考えている事はありますか?
H:今後は、いかにこの路線を守っていくかという事です。継続ができるかどうか、少子化ですし、イタリアン、フレンチ、中華、その他色々…。昔から比べると食事のジャンルも格段に増えています。その中で「選んで貰えるお店」にならないといけないので、いかに喜んで貰えるお料理を作っていくかです。

もちろん、守るだけでもダメですよね。基本を守りながらも、時代に合ったものを考えていかなくてはいけません。好まれる味についても、昔は塩分過多ですが、今は塩分控えめです。昔は全体的に辛く、今は甘くなっています。

また、うちでもJR伊勢丹でお惣菜を出していますが、昔はお惣菜を買うような風習がありませんでした。家庭でお母さんが作っていたからです。そこから、核家族になったり、共働きになったりし、家族の人数が少なかったら材料を買っても無駄にしてしまうので、自分の好きなお惣菜を買って帰ろうかな、となってきています。

ー 味覚を感じる力が、衰えてきているという事でしょうか。
H:今、ご家庭で出汁をとるところが少なくなってきていますよね。昔はどの家庭でも昆布と鰹から出汁をとっていました。時代の流れなので仕方ありませんね。

ー そういう中で、どういう味を出していくかを考えていく必要があるのですね。
H: うちは食材の持ち味を大切に生かすよう心掛けております。味の濃淡は人それぞれですので、おいしいお出汁で調理して「うちのお店の味はこれですよ」と、お料理を出しています。

ー ありがとうございました。

SAKE Springでの特製酒肴弁当

【DATA】
「六盛」
所在地:京都府京都市左京区岡崎西天王町71